がん治療最前線

シリーズ21
子宮体がんの放射線治療


子宮には体部(胎児を育てる場所)と頚部(子宮の入り口)があり、それぞれに発生したがんを子宮体がん、子宮頚がんと呼びます。この両者が区別されるのは、病気の性格や治療方法が異なるためです。ここでは子宮体がんの特徴を書きます。


■疫学…体がんは増加傾向

わが国では、子宮頚がんの発生が減少傾向にあるのとは対照的に、体がんは最近増加傾向にあります。子宮がんに占める体がんの割合は上昇しており、施設によっては30%をこえるところもあります。こうした傾向をふまえて、昭和62年度からは頸がん検診に加えて体がん検診も行なわれています。体がん発症の年令分布は50歳代後半に多く、75%が閉経後の婦人です。近年では、40歳代の増加も目立ちます。病理組織学的には体がんの90%は腺がんであり、放射線にとっては治しにくい相手です。頚がんでは扁平上皮がんが多く、放射線治療のよい適応であるのと異なります。


■病因…体質に関係の深い体がん

体がんには大きくわけると生物学的に2種類のタイプがあります。1つは閉経後の高齢者に多くみられる分化度の低いがんです。がんは一般的に分化度が低い方が悪性度は高いと考えられています。もう1つは、前がん病変である子宮内膜症を経て体がんに進展するタイプで、比較的若年者に多くみられ、高分化のがんが多いといわれています。こちらは、女性ホルモンであるエストロゲンが癌の発生に関与していると考えられています。頚がんが性体験やウイルス感染など外的因子と関係が深いのに対して、体がんは食生活や体質など内的因子と関係が深いとされています。体がんになりやすい危険因子としては、高脂肪、高カロリー食を好む、未婚、不妊、妊娠や出産回数が少ないこと、30歳以上の月経不規則やエストロゲンの服用歴などが挙げられています。肥満、糖尿病、高血圧などに合併しやすく、乳癌や卵巣癌との重複がんが比較的多くみられます。


■症状…月経時以外の出血に注意。閉経後も定期的な検査が必要

多くの症例では不正性器出血(月経時以外の出血)が初発症状としてみられます。おりものが茶色いといった症状がみられることもあります。もともと月経不順であったり、更年期の場合には、そのための症状と思われることがありますが、疑わしい症状がみられた時には医師の診察が必要です。他には、腰痛や下腹部痛が生じることがあります。


■診断…子宮の内膜から細胞・組織をとって調べる

体がんは子宮体部の内側にある内膜から発生します。体がんかどうかの診断には、この内膜からの細胞診が有用です。がんが疑わしい場合には、組織診を行い診断の確定をします。いずれも、子宮の内部に細い器具を入れて細胞や組織を直接採取し、顕微鏡的にがんかどうかを調べる検査です。体がんの拡がりを調べる(進行期を調べる)ための診断としては、単純X線写真、CT、MRI、エコーといった画像診断が大きな役割を果たします。子宮鏡、膀胱鏡、直腸鏡で内視鏡的にがんの拡がりを判断することもあります。採血では、腫瘍マーカーであるCA125の上昇の有無が参考になります。


■進行期分類…手術と放射線治療では異なる

がんがどのくらい拡がっているか表すのが進行期分類です。進行期を決めることで、治療方針を決めたり、治療後どのくらい生存できるか目安を求めたり、他の施設と成績の比較をすることが出来ます。子宮体がんの進行期分類は、手術が行なわれた症例では手術進行期分類を、また、放射線治療など手術が選択されなかった場合には臨床進行期分類を用います。

また、腺がんの中で充実性に増殖している細胞の割合がどのくらいかによってがんの分化度を病理学的に決定します。

手術進行期分類(手術後の病理検査の結果に基づき決められる)
0期 子宮内膜に正常とは異なる細胞が増えている。
I期 がん細胞が体部のみにとどまっている。
II期 がんが体部をこえて頚部に拡がるが、子宮の外には出ていない。がんが子宮の外(卵巣、卵管、子宮を支える靱帯、膣)に拡がっているが、骨盤の外には拡がっていない。
III期 骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節に転移している。
がんが膀胱や腸の粘膜にまで拡がっている。
IV期 がんが骨盤をこえた身体の他部位(そけい部や腹腔内リンパ節を含む)に拡がっている。
子宮体癌取扱い規約(改訂第2版)より


■治療法と予後…手術がfirst choice

もっとも一般的な治療法は手術です。手術は、糖尿病や高血圧の有無、年齢や肥満の程度などを考慮しながら最適な方法で計画されます。I期では、単純子宮全摘術+両側付属器(卵巣、卵管)切除術を行う施設が多いです。これに加えてリンパ節の郭清(切除)術を行って転移の有無を調べることがあります。II期以上になると、単純子宮全摘術よりは広めに子宮周囲まで切除する広汎子宮全摘術という術式になることが多いです。手術に伴って起こりうる合併症は、広汎子宮全摘術では排尿・排便障害が、リンパ節の郭清では下肢の浮腫が、卵巣切除では女性ホルモンの欠落症状(更年期障害など)があります。手術が行われた場合の5年生存率(治療後5年でどのくらい生存しているか)はII期で70〜88%と報告されています。

前述のような医学的理由で手術が出来ない場合や手術拒否の場合には放射線治療が行われます。放射線単独治療の場合、I期のように腫瘍が比較的小さい場合には5年生存率(治療後5年でどのくらい生存しているか)は65〜75%という報告が多いです。II期以上の大きな腫瘍では、腺がんの放射線感受性が高くない場合が多いため根治は難しくなってきます。また、進行期になるにつれて遠隔転移の頻度も高まります。現在、抗癌剤の併用をはじめとする様々な試みが行われています。放医研では遠隔転移を有さず、局所で進行した状態の子宮体がんに対して重粒子線治療を試みており、その成果が期待されるところです。その他、放射線治療は手術後の病理学的検索で再発の危険因子が見つかった場合にも追加治療として行われることがあります。

進行した症例では、抗癌剤やホルモン剤の投与も含めた集学的治療が行われます。

治療前 重粒子線治療後
治療前 重粒子線治療後
↑は子宮体部の腫瘍 治療後、腫瘍は消失
子宮体がんの重粒子線治療

(重粒子医科学センタ-病院 大野 達也)


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