2.11.2.1

パーオキシナイトライトによる生体障害機構とその防御物質に関する研究


第一研究グループ
伊古田暢夫、中川秀彦、安西和紀、上田順市、小澤俊彦

 生体構成成分の酸化的障害, 特にタンパク、核酸、および脂質などの放射線を含む環境ストレス障害が多くの病態において重要な役割を演じている。これらの障害の酸化活性種としてはヒドロキシラジカルやスーパーオキシドが考えられている。一方、新たな酸化的障害因子として最近パーオキシナイトライトが注目されている。パーオキシナイトライトは、一酸化窒素(NO)と活性酸素の一つであるスーパーオキシド(O2-)が直接反応して生成する化合物で、高い酸化およびニトロ化活性を有している。ここではパーオキシナイトライトに関して、生体成分、特にアミノ酸やタンパク質に対する障害機構を解析し、それらに対する防御物質を探索することを検討した。
 パーオキシナイトライトの酸化的障害機構について解析するため、チロシンのニトロ化およびジチロシンの生成反応を指標にし、HPLCを用いて反応性を調べその防御物質を検討した。合成化合物であるチオール含有化合物やセレン含有化合物に関して、プロリンジチオカルバメート化合物は、ジチロシン及び3−ニトロチロシンの生成をともに良く抑制した。またヒドロキシアミノセレン体は両者の生成を中程度に阻害した。リポ酸及びメラトニンと5−メトキシトリプタミンは、3−ニトロチロシンの生成は抑制したがジチロシンの生成はむしろ増加させた。ESRスピントラッピング法によりOHラジカル様活性種およびチロシルラジカルが検出された。パーオキシナイトライトとチロシンの反応でチロシルラジカルを検出したことから、パーオキシナイトライトの酸化・ニトロ化活性に関してラジカル経由によるニトロ化反応経路が存在することは示唆されたが、一方でニトロ化のみを選択的に阻害する化合物を見いだしたことから、OHラジカル様活性によるチロシンの一電子酸化に続く二酸化窒素ラジカルの付加以外にも、ニトロチロシンの生成経路があることが推測された。

[研究発表]
1)Miura,Y.,Anzai,K.,Urano,S.and Ozawa,T.:Free Rad.Biol.Med.,23,533−540(1997).
2)Suzuki,K.T.,Rui,M.,Ueda,J.,and Ozawa,T.:Res.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol.,96,137−146,1997.
3)Nakagawa,H.,Ikota,N.,Ozawa,T.,Sumiki,E.,Matsushima,Y.:Magnetic Resonance in Medicine.9,29−32(1998).
4)Nakagawa,H.,Ikota,N.,Ozawa,T.,Masumizu,T.,Kohno,M.:Biochem.Molec.Biol.Int.,in press.
5)Ikota,N.,Nakagawa,H.,Ohno,S.,Okuyama,K.,and Noguchi,K.:Tetrahedron,in press.
6)中川、伊古田、小澤、隅木、松島:第19回磁気共鳴医学会、京都,1997,5.
7)中川、大島、伊古田、小澤:SFRR Japan Meeting.横須賀,1997, 7.
8)中川、伊古田、小澤、隅木、松島:朝霧シンポジウム、山梨、1997,10.
9)Nakagawa,H.,Ikota,N.,Ozawa,T.,Sumiki,E.,Matsushima,Y.:2nd International Conference on Bioradicals and 5th International Workshop on ESR Imaging and in vivo ESR Spectroscopy,Yamagata,1997,10.
10)Ikota,N.,Nakagawa,H.,Ozawa,T.,Sumiki.E.,Matsushima,Y.:The 4th Annual Meeting of The Oxygen Society,San Francisco,1997,11.
11)中川、藤代、伊古田、小沢:第9回ビタミンE研究会,福岡、1998,1.


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