国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
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重粒子線治療の適応疾患、重粒子線の特徴、当院の実績、紹介方法について

QST病院 病院長 山田 滋

こんにちは。
QST病院 病院長の山田 滋(山田 滋)です。
本日は重粒子線治療の適応疾患、重粒子線の特徴、当院の実績、紹介方法について説明させていただきます。

重粒子線治療が適応となる疾患について

重粒子線治療が適応となる疾患については、(公)日本放射線腫瘍学会の粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)において推奨される疾患別治療方針に掲載されており、それに基づいて重粒子線治療を実施しております。

参照:JASTRO

重粒子線治療が適応となる疾患の概略を、保険適用、先進医療、臨床試験別に紹介いたします。
詳細は上記リンク統一治療方針をご確認ください。

保険適用

                                                                                                                                           
頭頸部頭頸腫瘍・涙腺がん(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)
照射回数 16回、治療期間 4週間の治療
脈絡膜悪性黒色腫
照射回数 4回、治療期間 1週間(回転ガントリーの臨床試験実施中)
骨軟部切除非適応骨軟部腫瘍(肉腫)
照射回数 8-16回、治療期間 2-4週間の治療
前立腺局所前立腺がん・局所進行前立腺がん
照射回数 12回、治療期間 3週間の治療
膵臓遠隔転移のない膵臓がん、膵がん術後局所再発
照射回数 12回、治療期間 3週間
婦人科子宮頸部腺がんⅡ~ⅣA
照射回数 20回、治療期間5週間
肝臓大型の肝細胞がん(4cm以上 混合型肝がんを含む)
照射回数 2回・4回・12回、治療期間2日~3週間                        
肝内胆管がん(腫瘤形成性)
照射回数 4回・12回、治療期間1週間・3週間
大腸術後骨盤内再発
照射回数 16回、治療期間4週間

先進医療

重粒子線治療の患者負担 314万円 それ以外は保険適用

食道食道がんステージⅠ
照射回数 12回、治療期間 3週間
転移および隣接臓器浸潤のない非小細胞肺がん
(臨床病期Tis, T1-T4N0の原発性肺がん(隣接臓器浸潤によるT4を除く))
照射回数 1回・4回・12回、治療期間 1日~3週間の治療
所属リンパ節転移あるいは隣接臓器浸潤を有する非小細胞肺がん
照射回数 16回、治療期間 4週間の治療
(臨床病期TanyN1-3M0あるいはT4N0M0(隣接臓器浸潤))
遠隔転移のない気管・気管支がん
照射回数 16回、治療期間 4週間の治療
生検または画像で診断された腎細胞がん
照射回数 12回、治療期間 3週間
婦人科子宮頸部扁平上皮がんII~IVA(6 cm以上)
照射回数 20回、治療期間 5週間
婦人科領域(外陰、腟、子宮原発)の悪性黒色腫
照射回数 16回、治療期間 4週間
肝臓小型の肝細胞がん(4cm未満 混合型肝がんを含む)
照射回数 2回・4回・12回、治療期間 2日~3週間
少数転移性肺転移
(3個以下)
照射回数 1回・4回・12回・16回、治療期間 1日~4週間
少数転移性肝腫瘍
(3個以下)
照射回数 1回・4回・12回・16回、治療期間 1日~4週間
少数リンパ節転移照射回数 12回・16回、治療期間 3~4週間

臨床試験

重粒子線治療にかかる患者負担なし、それ以外は保険適用

食道ステージII~III食道がん 術前照射
照射回数 8回、治療期間脈絡膜悪性黒色腫
乳腺ステージ0または1の乳がん
照射回数 4回、治療期間 1週間
腎臓生検または画像で診断された腎細胞がん
照射回数 4回、治療期間 1週間
重粒子線治療の適応
重粒子線治療の適応

重粒子線の特徴

重粒子線とは炭素(C)、ネオン(Ne)、シリコン(Si)アルゴン(Ar)などのイオンが超高速で飛んでいるものです。当院では炭素イオン線をがん治療に利用し治療しており、3つの特徴があります。

  • 一般の放射線治療と比べ、がん病巣に集中して照射できます。
  • 一般の放射線が効きにくいがんにも効果があります。
  • 短い治療期間で治療できます。
重粒子線とエックス線の線量分布比較
重粒子線とエックス線の線量分布比較

QST病院の実績

世界初の医療専用装置である当院の重粒子線がん治療装置(HIMAC)の主加速器は直径がおよそ40m、周長約130mで、1994(平成6年)から重粒子線がん治療が開始され、25年以上の重粒子線治療経験があり、令和3年3月までの治療実績は世界最多の13,437件(前立腺3,971件、骨軟部1,384件、頭頸部1,353件、肺1,115件、膵臓810件、肝臓695件、直腸術後660件、婦人科328件、眼273件、食道127件、頭蓋底120件、中枢神経106件、腹部リンパ節105件、乳房34件、腎臓23件、回転ガントリー等の臨床試験41件、総合2,292件)を実施しています。
新しい照射法の開発のため、2010年にHIMACの増設を行い、重粒子線の効き目を患部だけに集中させることによって副作用をおさえ、治療効果を高めるために、呼吸同期照射法と3次元ビームスキャニング照射法を開発しました。また、楽な姿勢で治療が受けられるように、どんな方向からでも重粒子線が照射できる回転ガントリーを開発しました。
100床の入院施設を完備し、専門医等28名が重粒子線治療に専従しています。

回転ガントリー
回転ガントリー

楽な姿勢で治療が受けられるように、どんな方向からでも重粒子線が照射できる(360°任意の方向から照射が可能)

わが国における重粒子線治療施設は、当院の他に兵庫県立粒子線医療センター、群馬大学医学部附属病院重粒子線医学センター、九州国際重粒子線がん治療センター、神奈川県立がんセンター、大阪重粒子線センターで、治療を行っております。

当院での重粒子線治療を希望される方へ

当院の初診予約は紹介元医療機関からのFAX申し込みによる紹介予約制となっています。申込方法は「初診予約/セカンドオピニオン」をご参照ください。

まとめ

重粒子線治療は、手術非適応症例に対して手術に代わり得る局所療法です。手術に比べて根治性は劣りますが低浸襲であり、他の放射線と比べてサイズが大きい腫瘍に対しても短期間の治療が可能です。

連絡先

連絡先QST病院 地域医療連携室
TEL:043-206-3483
FAX:043-206-3439
受付時間平日 9:00〜11:30、12:30〜16:00
  • 16:00以降は翌診療日の対応となります

執筆者プロフィール

QST病院 病院長山田 滋(やまだ しげる)
辻 比呂志
出身1982年三重大学卒業
資格医学博士、日本医学放射線学会放射線治療専門医、日本大腸校門学会 評議員、千葉大学客員教授
専門放射線腫瘍学、放射線生物学、外科学(消化器・乳腺)、宇宙医学

(R4.4.1)