国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
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腎臓がん

腎臓がんに対する重粒子線治療について

適応症

腎臓がんへの重粒子線治療は、臨床試験または先進医療として行われています。

疾患名適応
1腎がん生検または画像により診断された腎細胞がん

腎臓がんの根治療法は、手術が第一選択です。4cm以下の腫瘍では、凍結療法も標準治療として行われています。重粒子線治療は、主に合併症などで標準治療が困難な患者さんや、手術を行うと直後に透析導入が必須と考えられる患者さんに対し、1997年から施行されています。当初は16回照射(4週間)が行われ、下記に示すように19例と少数ですが、進行例を含んだ患者群において、手術をはじめとする他治療に匹敵する高い効果と安全性が、長期の経過観察においても確認されています※1

2013年からは12回照射(3週間)の前向き臨床試験が実施され、8名の患者さんに登録いただきました。こちらも、再発なく、軽微な副作用のみ、という良好な成績でした。以上の結果を踏まえ、さらなる患者さんの負担軽減を目的として、2017年からは4回照射(1週間)の前向き臨床試験が開始されています。現在行われている4回照射の詳細につきましては、臨床試験計画書をご参照ください。臨床試験の適応に合致しなくても、重粒子線治療の適応があると考えられる場合には、先進医療として12回照射を施行しています。

治療実績

疾患名期間例数
1腎がん1997~201419

16回照射と12回照射の臨床試験対象外をあわせた19例の治療成績は以下の通りです※1
観察期間中央値は6.6年(範囲 0.7~16.5年)で、5年局所制御率(5年間照射した病変がコントロールされた率)は94.1%、5年がん特異生存率(5年間腎臓がんを原因として死亡しなかった率)は100%でした。
治療の合併症のうち、腎臓の機能については、もともと糖尿病性腎症を有していた症例や片腎症例を除いて、重度の腎機能低下はありませんでした。腎臓以外の合併症は、2000年に治療を行った1例のみ重度の皮膚合併症がみられましたが、その後はもっとも軽微な副作用のみでした。

※1 Kasuya G et al.: Cancer Science. 2018;109:2873-2880.