国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
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膵臓がん

膵臓がんに対する重粒子線治療について

膵がんに対する重粒子線治療は保険治療として実施しています。対象は手術による根治的な治療法が困難な局所進行性膵がんです。手術ができないあるいは手術を希望されないなど根治的治療が困難な患者さんを対象としており、遠隔転移や腹膜播種がある場合は治療対象になりません。その他、新たな治療法の開発を目指した臨床試験を行っています。

治療実績

疾患名期間例数
1切除不能膵がん

1. 局所進行膵がん

2007年から局所進行膵がんに対するゲムシタビン(GEM)併用重粒子線治療の線量増加第I/II相試験が行われ、72例の患者さんにGEM併用重粒子線治療が施行されました。用量・線量制限となる正常組織障害は3例(4%)に認めたのみで(Grade4好中球減少2例、Grade3胆管炎1例)、極めて少ない割合でした。治療成績は、2年局所制御率83%(2年間照射部位に再発がない割合が83%)で、2年生存率は35%でした。45.6Gy(RBE)以上照射された高線量群42例の2年生存率、生存期間中央値はそれぞれ48%、23.9か月と良好な成績でした※1

J-CROS(重粒子線治療多施設共同研究:Japan Carbon-ion Radiation Oncology Study Group)では、2012年から2014年まで放医研、九州国際重粒子線治療センター、群馬大学で重粒子線治療を施行した72例を解析しました。正常組織障害としては重症(Grade3以上)の血液毒性が19例で、非血液毒性は食欲不振が2例のみでした。全症例の2年全生存率、生存期間中央値はそれぞれ46%、21.5か月でした※2

2. 膵がん術後局所再発

2011年1月から2015年3月まで30例の膵がん術後局所再発に対し重粒子線治療が施行されました。正常組織障害としてはG3の白血球減少が2例に認められたのみでした。2年生存率は51%で生存期間中央値は26か月でした※3

※1 Shinoto M, et al.: Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2016; 95:498-504
※2 Kawashiro S, et al.: Int J Radiation Oncol Biol Phys. 2018; 101:1212-1221
※3 Kawashiro S, et al.: Radiother Oncol. 2018; 129:101-104

(R4.4.1)