2024年6月より、肺がんの一部が保険適用となりました。適応となる対象は以下のとおりです。
疾患名 | 適応 | |
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1 | 早期肺がん | 臨床病期Ⅰ期からⅡA期までの原発性肺がん(手術による根治的な治療法が困難であるものに限る) |
臨床病期Ⅰ期からⅡA期、すなわちリンパ節転移、遠隔転移のない最大径5㎝以内(T1-2nN0M0)の原発性肺癌が対象となります。治療期間は1日で終了することがほとんどですが、重要な臓器が近接していると4週間程度要することもあります。
また、上記以外の病態については、引き続き先進医療として、肺がんに対する重粒子線治療が行われます。
疾患名 | 適応 | |
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1 | 転移および隣接臓器浸潤のない肺がん | 上記保険適応以外の臨床病期Tis, T1-T4N0の原発性肺がん (隣接臓器浸潤によるT4を除く) |
2 | 所属リンパ節転移あるいは隣接臓器浸潤を有する原発性非小細胞肺がん、遠隔転移のない気管・気管支がん | 臨床病期TanyN1-3M0あるいはT4N0M0(隣接臓器浸潤) |
3 | 転移性肺腫瘍 | 少数転移性肺腫瘍(oligometastatic,3個以下) |
リンパ節や他の臓器への転移がない肺がんで、隣接臓器(横隔膜、縦隔、心臓、大血 管、気管、反回神経、腕神経叢、食道、椎体)への直接浸潤もないものが対象です。
保険適応の対象同様、治療期間は1日で終了することがほとんどですが、重要な臓器が近接していると3週間程度、病変サイズによっては4週間程度を要することもあります。
リンパ節に転移がないかあっても胸部のリンパ節に止まっている場合で、遠隔転移がなく、胸水や心嚢水のない肺がんが対象となります。がんが隣接臓器に浸潤している場合も治療の対象となることがありますが、浸潤の状況で治療を行うことが危険な場合は治療ができません。
治療は16回照射(4週間)を行っています。
転移性肺腫瘍とは別の場所にできたがんが肺へ転移して発育したものをいいます。肺の細胞が発がんしたがん(原発性肺がん)と区別して転移性肺腫瘍とよんでいます。
重粒子線治療の対象となるのは、原発巣が治療されていて、肺以外に転移がなく、肺転移の個数が3個以下の場合です。
疾患名 | 期間 | 例数 | |
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1 | 転移および隣接臓器浸潤のない肺がん | 1994-2023 | 約860 |
2 | 所属リンパ節転移あるいは隣接臓器浸潤を有する原発性非小細胞肺がん、遠隔転移のない気管・気管支がん | 1995-2023 | 約170 |
3 | 転移性肺腫瘍 | 2003-2023 | 約230 |
Ⅰ期肺がんに対しては、当院で2003年から2012年まで1回照射の線量増加試験が行われ、現在の処方線量(50Gy)に決定しました※1。T1-2N0M0、すなわち1-2A期の肺癌に対する現行の1回照射の成績については、2020年に5年生存率82%、5年局所制御率92%と報告されています※2。また、間質性肺炎合併や中枢型等の理由で、X線治療によるリスクが高い対象に対しても、比較的安全に治療が可能と分かってきており、救済治療として期待されています※3,4。局所進行肺がんに対する重粒子線治療単独の成績については2015年に2年生存率52%※5、2021年に2年生存率68%※6と報告されています。早期肺がんに比較して生存率等は劣りますが、他治療が困難な患者さんへの治療として有望であり、今後も改良を続けていきます。また、転移性肺腫瘍全体については2013年に2年生存率71%※7、2014年に大腸がん肺転移34例を対象に2年生存率65%※8と報告されています。
※1 Yamamoto N, et al.: J Thorac Oncol. 2017;12:673-680.
※2 Ono T, et al.: Cancers (Basel). 2020 Dec 31;13(1):112.
※3 Aoki S, et al.: Cancers (Basel). 2024 Jan 29;16(3):562.
※4 Aoki S, et al.: Cancers (Basel). 2024 Feb 25;16(5):933.
※5 Takahashi W, et al.: Cancer. 2015;121:1321-1327.
※6 Hayashi K, et al.: Jpn J Radiol. 2021 Jul;39(7):703-709.
※7 Yamamoto N, et al.: Pulmonary Medicine. 2013;219746, 6.
※8 Takahashi W, et al.: Radiation Oncology. 2014;9: 68.