放射線影響研究部

放射線を安全に安心して利用するためには、科学的な根拠に基づいた放射線取り扱いの規制や管理が重要です。そのために必要な研究のひとつが、どれほどの放射線が体にどれほどの影響をおよぼすのかについて、定量的に評価し、その仕組みを解明する研究です。このような研究の重要性は、特に原発事故を受けて再認識されています。
放医研ではこれまで、マウスやラットを用いて放射線の様々な生体影響について情報を提供してしました。最近では、子どもと大人の違いや生活習慣の違いに着目し、放射線ががんなどの病気のリスクをどのくらい高めるのかを研究してきました。今後は、これまでの動物実験等の成果をさらに発展させ、放射線が病気のリスクを高める仕組みを、最新の科学技術を用いて明らかにしていくとともに、これらの知見を疫学調査で得られている知見と統合し、より信頼性の高いリスク評価に役立てていきます。

研究テーマ

最新科学で迫る、放射線発がんの仕組み

発がんは、放射線被ばくの量が低い場合に考えなければならない、もっとも大切な生体影響です。放射線は、細胞の中にあるDNAを傷つけ、これが不正確に直されて遺伝子変異となることががんの原因だと考えられています。もし、具体的にどのような遺伝子変異がどのような細胞の中に作られるのかがわかれば、放射線ががんのリスクを高める仕組みがより明確になり、より科学的なリスクの評価や、リスクを低減する方法の開発につながる可能性があります。そこで、次世代ゲノム・エピゲノム技術や、発がんの起源細胞に注目した幹細胞生物学といった最新の科学技術を取り入れて、放射線による発がんに関する新しい科学的知見を創出します。

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生活習慣の放射線影響への修飾効果を調べる

放射線の影響は、喫煙や食習慣などの生活習慣によって変化する場合があります。最近は、生活環境における様々なストレスが人の健康に影響することが注目されています。現代においては職種の多様化、女性の社会進出もあり様々なストレスが新たに生じてもいます。発がん等の放射線の健康影響についてストレスや食習慣がどのように作用するのかを細胞やモデル動物個体を用いて調べ、放射線からの防護、利用時のリスクの低減に資することを目的として研究を進めています。

動物実験による低線量率放射線の影響研究

マウスに低線量率放射線を長期照射し、寿命短縮と、造血系および固形がんの発生を解析します(図1)。この研究によって、小児期における低線量率放射線照射による寿命短縮と、各臓器に誘発されるがんを指標とした線量率効果係数(dose-rate effectiveness factor: DREF)を求めます。また、特に放射線による乳がんの発がんリスクが比較的高い動物モデルであるSDラット、および小児に多い脳腫瘍のモデルマウスに低線量率放射線を連続照射し、小児期と成人期の線量率効果の相違を明らかにする実験も進めています。

放射線生物影響研究資源アーカイブ(J-SHARE)の構築

放射線影響研究部では、大規模な動物実験を用いて小児期の放射線被ばく影響研究や低線量率被ばく影響研究を行い膨大な動物実験資料を蓄積しています。このような貴重な資料を保存すべく、J-SHAREプロジェクトを開始しています。現在は被ばく時年齢別、線種別、および被ばく条件別(単回、分割および低線量率連続)の寿命への影響評価研究と、乳がん、肺がんの発がんリスク評価研究で得られたマウスやラットの動物実験資料をアーカイブ化しています。今後、J-SHAREを米国のJANUSや欧州のSTOREアーカイブと連携して国内外の研究機関へ公開し、共同研究を通して放射線影響研究の成果の最大化に向けて構築を進めていきます。

研究チーム

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