環境動態・影響プロジェクト

安全な環境に安心して暮らすために

画像:環境中での放射性物質の動きとその影響に関する研究

事故によって環境中に放出された放射性核種は、住民に外部被ばくをもたらし、食品に移行した場合には内部被ばくの原因となります。放射性核種は時間をかけて環境中を移動するため、住民の被ばく線量を評価して長期的な傾向を予測するためには、環境中での放射性核種の動きについての時間をかけた観測が不可欠です。
また、汚染された環境中にはヒト以外の動植物も生息しており、避難できないこれらの生物は住民よりも遥かに大きい線量の放射線を受けていると考えられます。住民が安心して生活するためには、その周辺環境の健全性も調査する必要があります。
そこで本プロジェクトでは、福島の住民を取り巻く環境に焦点を当て、1)住民が周辺環境から将来にわたって受ける被ばく線量について環境での放射性核種の動きを加味した評価を行うこと、2)周辺環境に生息する生物が放射線によって受ける影響を明らかにすること、の二つの事業を実施しています。

主な研究内容

放射性物質の動きと住民の線量評価

環境中の生物に対する影響評価

放射性物質の動きと住民の線量評価

画像:福島沖の堆積物や底生生物の採取

福島沖の堆積物や底生生物の採取

<海産物中の放射性セシウム>
 海産物中の放射性Csは、生物の種類によってその減り方に大きな違いがあります。福島県沖での水産物(非流通)のモニタリング結果を見ると、コウナゴやイワシのように表層や中層を泳ぐ魚種については比較的短期間で濃度が減少している一方、カレイやヒラメのように海底に生息する魚種は減少が緩やかです。このような違いには、生息環境および餌となる生物の汚染状況が強く関わっている可能性があります。
そこで、福島県水産試験場や東京海洋大学等と連携して、水産物中の放射性核種の濃度を調査すると共に、海水や餌となる生物中の濃度変動や生息環境での挙動についての調査をおこなっています。これまでの調査では、海水や堆積物中の濃度は減少する傾向が見られました。堆積物での減少は海水に比べると緩やかな傾向があります。また魚介類の餌となるプランクトンも2014年以降は濃度が事故前のレベルに下がりました。水産物の部位毎の調査と合わせて海底のゴカイやヒトデ等の調査もおこなっています。

環境中の生物に対する影響評価

野ネズミとメダカの採取

画像:野ネズミとメダカの採取

福島第一原発周辺地域の自然環境に生息する種々の生物を採取し、それぞれの生物および生息環境の放射能を継続的に測定することにより、生物が長期間にわたって受ける被ばく線量を推定すると共に、放射線の生物影響の有無をいくつかの生物指標で検定し、人が生活する周辺の自然環境の健全性について検証します。本プロジェクトでは、ヒトと同等またはそれ以上に高い放射線感受性を示すと考えられる動植物の中から、両生類のサンショウウオ、植物のスギやマツ、小型哺乳類のネズミ等に着目することにしました。また、生物に対する放射線影響を解明する目的で古くから利用されているメダカも対象としています。その上で、それらの被ばく線量と放射線影響を調査する一方、実験室での飼育・栽培が可能な生物については、放射線影響に関する定量的データを得るための放射線照射実験を実施しています。

<野ネズミ>
ヒトと同じほ乳類である野生ネズミについては、今までに報告されている実験マウスの低線量長期被ばく実験の結果を踏まえて、染色体異常や小核形成といった指標を利用することを検討しました。これまでに、ヒメネズミの二動原体染色体異常を検出するための方法を開発し、高線量率地点(平成2012年1月時点の空間線量率:60-80μSv/h)および中線量率地点(同:20-30μSv/h)で捕獲されたヒメネズミの二動原体染色体異常の発生頻度は、コントロール地点(同:0.1μSv/h)のヒメネズミの値より高いことを見出しています。

<サンショウウオ>
生物の中で両生類は放射線感受性が比較的高く、種によっては急照射時の半数致死線量がヒトと同程度です。両生類の中では、一般に有尾類(イモリ、サンショウウオ等)の方が無尾類(カエル)よりも放射線感受性が高いとされています。本事業では、福島県内におけるトウホクサンショウウオの採取を進める一方で、従来の知見が極めて乏しい慢性被ばく影響に関して、実験室内でガンマ線を連続照射して線量率による影響の違いを調べています。

放医研の長期連続ガンマ線照射施設を用いたサンショウウオへの長期照射試験

放医研の長期連続ガンマ線照射施設を用いたサンショウウオへの長期照射試験

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