放医研が「IAEA協働センター」として指定される
IAEAとのパートナーシップをさらに強化へ

【概要】

独立行政法人放射線医学総合研究所(米倉義晴理事長、以下、放医研) が、昨年12月21日付で、国際原子力機関 (International Atomic Energy Agency、以下、IAEA) から協働センターと して指定を受けたことが、外交ルートを通じて平成22年1月14日に伝達され、同日、放医研で正式に協働センターを発 足し活動を開始しました。

「世界の核の番人」であるIAEAは、国際間の調整機関として活動しています。しかしながら、実践的な研究や人材育 成を行う組織を持ちません。このため、活動を支援する機関を世界に求め、これを協働センターとして指定すること にしています。

平成21年12月、IAEA事務局長に就任された天野之弥氏は、就任演説で『原子力の平和利用、特に医療面への利用は、 世界の人々の健康に、特にがんとの闘いに有用である』と発言されました。平成19年より生物影響研究分野の協働セ ンターであった放医研は、これを受けて、放射線医療や生物影響研究など、互いに関連する放射線科学の重点3分野 での研究開発と、人材育成を行う協働センター構想を提案し、審査を経て指定に至ったものです。IAEA協働センター は世界12カ国、12機関ありますが、我が国では放医研が唯一の機関です。

指定期間は4年間で、IAEA加盟国の医療関係者に対して教育訓練を実施するなど、協働センターとしての活動を行う予 定です。放医研は、国内唯一の放射線科学を研究する専門機関として、その特殊かつ高度な施設、多様な人材を駆使 し、世界の人々の健康のために貢献していきたいと考えています。

1. 背景

国際原子力機関*1 (以下、IAEA) 憲章は、IAEAは全世界に おける平和、健康及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、増大する役割を果たすことを述べています。このため IAEAでは、技術協働プロジェクト、調整研究プロジェクトや地域協定を通じて、加盟国の原子力技術の利用に寄与す る方策を打ち出し、平成16年には、原子力技術の研究、開発、及びその専門家を育成するIAEAのプログラムの活動を 支援するため、その分野における代表的な研究機関をIAEA協働センター*2として指定 する施策を導入しました。

放射線医学総合研究所(以下、放医研)とIAEAは、これまでの連携協力の成功を踏まえ、よ り強力な連携協力体制構築のための方策を検討してきましたが、このほど、従来の協働分野である「放射線生物影 響」に、「分子イメージング」及び「重粒子線治療」の研究分野を加え、放射線影響分野、および放射線医療分野で の総合的な連携協力をスタートさせることにしました (図1)。一つの研究機関が、このような複数の研究分野におい てIAEA協働センターとなるのは、世界で放医研が初めてです。

2. IAEA協働センターとしての活動

平成22年1月~平成26年1月の4年間における、放医研のIAEA協働センターとしての分野は以 下の3研究分野で、この間、放医研はこれらの分野における情報の蓄積・発信を進めるとともに、ワークショップ開催 などにより加盟国の専門家との知見交換を行うことで、国際的な枠組みの策定に貢献し、研修プログラムの実施によ り加盟国における専門家の育成を図ることを目指します。同時に放医研の研究成果をより見える形で日本のみならず 世界の人々に還元していくことにもつなげたいと思います。

具体的には以下の通りです。

・「放射線生物影響」の研究分野

高線量放射線の人体への影響について幅広く知られていますが、低線量放射線による影響に ついてはあまりよく知られていません。この低線量放射線による影響を予測するために、染色体異常、突然変異や細 胞死等の細胞応答や個体のがん誘発の適応応答について研究を進め情報を蓄積します。また、環境放射線レベルの高 い地域の住人の疫学調査を行うことで低線量放射線の健康影響について考えます。

また、子供は放射線による発がんの影響が受け易いと考えられます。マウスなどを用いる動 物実験により放射線による発がんリスクを評価し、がん以外の疾患発病リスクについて文献調査を行い、情報を蓄積 します。

・「分子イメージング」の研究分野

分子イメージングの1つの領域であるPETは世界的に標準的ながん診断として普及してい ます。このため、発展途上国を中心とする多くの加盟国が、がん患者の臨床管理を改善するためにPETの導入を考えて います。また、脳・神経疾患患者の診断や研究にはPETやMRIが利用されています。放医研は、世界的に高水準にある 放医研のPETやMRIによる分子イメージング研究および臨床の知見を加盟国の専門家と共有し、加盟国での普及 を支援します。さらに、加盟国のPETの放射性医薬品等の品質管理や保証体制を強化します。

・「重粒子線治療」の研究分野

陽子やヘリウムより重い炭素を加速して行う重粒子線治療は、その高い生物学的効果比によ り、放射線感受性が高く、そして放射線抵抗性を示す腫瘍に対しても効果的であることが示されています。世界的に も重粒子線治療の必要性が認識され、放射線腫瘍医、医学物理士、診療放射線技師等の様々な専門家の育成と施設設 計や管理等の技術強化が欠かせません。このため、これまで放医研が蓄積した重粒子線を用いたがん治療や臨床研究 の情報を加盟国の専門家と共有し、加盟国での重粒子線治療や臨床研究の確立を支援します。また、重粒子線治療の 線量プロトコールの標準化、治療機器の品質管理や保証体制の強化を図ります。

放医研は上記活動について、毎年末までに進捗状況をIAEAへ書面で報告することになってい ます。

放医研はIAEAと協働して2010年に第1回IAEA協働センターワークショップを東京で開催し、 同研究分野の現況と展望について加盟国の専門家と意見交換を行い、IAEA協働センターの活動を広く周知する予定で す。

3. 成果と今後の展望

放医研は、これまでもIAEAに対し専門家を派遣するなど、様々な連携協働を行ってきまし た。今回の幅広い分野におけるIAEA協働センターとしての指定を踏まえ、放射線科学の分野全般における総合的な研 究機関として、世界に先端情報を発信し、放射線科学を先導し、特にアジア地域の優秀な専門家の育成等を通して、 アジア地域でのこの分野におけるハブ的活動を強化していくことを考えています。



図1. 放医研に授与されたIAEA協働センターの指定プレート

(用語解説)

*1 国際原子力機関 (IAEA)

ウイーン (オーストリア) に本部を持つ国連関連機関で、1957年に設立されました。その使 命は、核科学と技術の平和利用を推進することと、原子力安全の基準を策定し高いレベルの安全を維持すること、核 不拡散条約の履行を確認し、核物質と施設が平和目的にのみ利用されることを確認することです。2009年12月に、天 野之弥氏が日本人として初めて事務局長に就任しました。

*2 IAEA協働センター

IAEA協働センターは、IAEAの研究・開発・研修に関する特定の業務を支援するため、世界各 国の関連研究所の中から選ばれ組織化された機関です。IAEA協働センターの認定は、IAEAの事務局次長により対象機 関の活動や成果などの評価をもとに認定されます。IAEA原子力科学応用局では、IAEA協働センターとして、現在、12 カ国で12の研究機関を指定しています。IAEA原子力科学応用局は、原子力技術の応用によって、加盟国が疾病予防、 診断及び治療といった医療分野に係るニーズに対処する能力を強化するという健康増進プログラムを実施していま す。このプログラムは、「放射線腫瘍学及びがん治療」、「核医学」及び「線量評価及び医学放射線物理」のサブプ ログラムを含み、放医研はこの3つのサブプログラムを支援します。これまで研究機関の活動は特定分野が大半でした が、互いに関連する複数のプログラムで協働機関として指定された事例は今回の放医研が初めてです。


(問い合わせ先)

国立研究開発法人 放射線医学総合研究所
企画部 広報課


TEL : 043-206-3026
FAX : 043-206-4062
E-mail :  05;nfo@nirs.go.jp

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